●ごあいさつ
個人で治療院をやるかたわら、大好きなヒップホップカルチャーの役に立ちたいと言う気持ちで立ち上げた会です。
自分の仕事を活かしながら、現役のストリートダンサーたちと交流しながらストリートダンスと医学について研究し、少しでも情報を共有できたらと思っております。
SDMS代表 木田実
●会の趣旨
義務教育への導入や各メディアへの露出などで見ます様に、近年のストリートダンスシーンはかなり大きなものとなってまいりました。
その様な中、ストリートダンスで怪我する人も当然増えているわけですが、
「治療院や病院に行っても、なかなか理解してもらえない・・・・」
という事態も増えていることと察します。
現状は、ストリートダンスを理解する治療家や医師がなかなかおらず、また怪我をしたダンサー本人もどうしたらよいのか分からない、という状況が多いことでしょう。
そこで少しでもその様な状況に対応できればと思い、この会を立ち上げました。
情報は私が交流しているダンサーたちから得たものであり、私個人でまとめたものでありますから、当然偏りもあり、必ずしも絶対ではありません。
ですが、この様な見方もあるよと言う様な、一つの意見として見て頂きたいのです。
医療情報ではありますが、気軽にご覧になって頂き、
「ああ!これは自分に当てはまるな!」
などと思って頂ければ幸いです。
私は個人治療院をやっているかたわら、プライベートでストリートダンサーたちのトレーナーをやらせて頂いており、今までの活動でたくさんのストリートダンサーたちの怪我を見てまいりました。
会の名称は「ストリートダンス医療研究会」です。
「会」と名付けたのには、いくつか理由があります。
まず一つめは、協力してくれるダンサーたちあってのものであるということ。
情報をまとめて発信するのは私ですが、それは私に関わってくれる多くのダンサーたちのおかげであること、つまりみんなの会であるということです。
二つめは、気軽さと動きやすさです。
あまり大きな組織にしてしまうと運営そのものが大変です。また、ダンサーたちとの距離感も大切にしていきたい、そんな思いから有志によってなる「会」とした訳です。
ストリートダンサーと言っても、成長期にあるキッズ、学校での部活動、プロ志望の人、インストラクター、働きながら余暇を使ってダンスを楽しむ人など、そのあり方は様々です。
それらのどの層のストリートダンサーにも注意して欲しい怪我の対処や予防の知識を掲載してまいります。
●ダンスのある未来を消さないために・・・・
1、コンディショニングの必要性
自分の未来や可能性を消してしまう。
そのリスクは、ストリートダンサーだけでなく、全てのスポーツ愛好者が抱えている問題です。
運悪く大きなケガをしてしまったり、筋力やセンスだけの限界がきてしまったり。
例えば“首のヘルニア”。
この症状は、アクロバットの失敗やブレイキンの頭を使う技などだけで起こるものではありません。
その様な危険性は無さそうに見える、ジャズダンスなどでも起こることがあるのです。
普段から首や肩がこっていて、その周りの筋肉が硬いままで、大きく動かすアイソレーションや、振り回す様な首のロールが繰り返されたら・・・・・
周りの筋肉が硬いことにより、背骨の動く範囲が狭くなった状態が長く続くと、背骨のつなぎ目にある柔らかい“椎間板”が押し出されて変形し、神経を圧迫して首から腕に痛みやしびれが出てきます。
始めたばかりの初心者の内は、まだそれほど疲労もたまっておらず、難度の高い技に挑戦することも少ないでしょうから、そうした実感はあまり無いかもしれません。
しかし、続けていく以上は必ず遭遇するであろう、ケガやスポーツ障害。
それを防ぐためには、疲労をとるための睡眠や食事の他、ストレッチや筋トレなどで体のコンディションを整えることが必要です。
優れたコンディショニング(ストレッチや筋トレなど)は、怪我の予防や回復だけでなく、技術の向上に直結しています。
筋肉や関節をよい状態にしておけば、体がよく動いてくれるのは当然ですよね。
私自身も、若い頃に打ち込んだ武道や格闘技は今も続けています。
たまにしか練習はできていませんが、日々の疲れを抜くために、ストレッチや簡単なエクササイズを行い、コンディショニングだけは欠かしません。
そのおかげで、ただ続けているだけではなく、現在も総合格闘技のプロ選手たちやフルコンタクト空手の全国トップクラスの選手らと練習を一緒に楽しめるくらいの状態を維持しています。( 武道空手研究会 http://kidaminoru.jimdo.com/ )
また、よいコンディションが保てれば、技術の向上も続くのが価値のあるところです。
私自身、現在も技術が向上し続けています。
2、コンディショニングとスキルアップ
ストリートダンサーたちのコンディショニングへの意識は、
「怪我の再発予防」
と、
「スキルアップ」
と言う2つの方向性があると思います。
ケガをしたダンサーたちを治療していて思うのは、食生活や睡眠などの要因もありますが、その痛めた原因のほとんどが、
”体が使いきれてない“
と言うことが見受けられます。
複雑なダンスの動きはしているのですが、各部分の関節や筋肉の動きを見ますと、”最大可動域“ まで動かしていない、と言うことなのです。
ダンスの動きだけでは、必ずしも全ての関節を最大可動域まで動かす必要はありませんから、その様なことがあっても当然です。
しかし、関節や筋肉がのびのびと使われず、いつも動かす範囲が狭い様では、筋肉も固まってきます。
すると、無駄な力が入りやすくなりパフォーマンスが悪くなったり、体のあちこちに痛みを感じる様になります。
それらのことからコンディショニングのポイントは、全身の関節を
”最大可動域まで動かすこと“
が大きなポイントと言えます。
しかしこれは、誰もが“完全な開脚”などができなくてはいけない、と言う様な意味ではありません。
医学的・運動学的に理にかなった動作であり、むちゃくちゃ体が柔らかい人だけにしかできないと言う動作ではないのです。
”力を抜いて、自然に止まるところまで“
の範囲でいいのです。
逆から言えば、どれだけ関節が開いても、力みが抜けない様では、半分しか正解ではないと言えます。
もちろん、開脚やブリッジなどはある程度はできた方がよいですが、ダンサーや格闘技選手、スポーツ全般において、もっとも求められることはなんでしょう?
ほとんどの方が望むのは、
“動きのやわらかさ”
なのではないでしょうか。
自分のイメージどおりに動いてくれる体ですね。
動きが固ければ、一つ一つの動作がスムースではなく、力んでしまい、パワーも無駄に消費されてスピードも出ません。
筋力はついた・・・
柔軟性もあがった・・・
それでももし、以前と同じ部分が、以前と同じくらい痛んだりしていないでしょうか?
もし、今そういう状況にあれば、現在取り組んでいるトレーニング内容(ストレッチや筋トレ)を見直してみて下さい。
よいコンディショニングができれば、それは必ずスキルアップにもつながり、楽に動けて体の負担も減ります。
コンディショニングを意識することで、皆さんもダンスを永く楽しめることでしょう。
参考)コンディショニングの項目”体幹トレーニングのその前に・・・”のページ