【ストリートダンスと婦人科】
私がストリートダンスのサポートで関わらせて頂く様になって、
キッズや女性ダンサーとも多く関わらせて頂く機会が増えてまいりました。
今までも女性ダンサーのための記事を書いてまいりましたが、今回はもう少し踏み込んで、ストリートダンスと婦人科の問題についてお話したいと思います。
婦人科系の問題は、女性にとっては生涯の大半にわたり深く関わる問題であります。
それだけに重いテーマでありますので、今までためらっておりましたが、ストリートダンサーたちの状態は、私の想像以上に負担がかかっているのではないかと思い、お話することにしました。
まず、結論から申し上げると、ストリートダンス全般の動きは、かなり婦人科に影響すると考えています。
しかし、私は鍼灸師・柔道整復師と言う国家資格者ですが医師ではありませんので、内科系の問題に対して断定することはできません。
しかし、実際にストリートダンサーたちと接している中で強く感じていることであります。
まず、他のスポーツでは、女性の体にどの様な影響があるかと申しますと、女子マラソン選手などでは、体脂肪が1ケタのパーセントにでもなると(約25%が正常値)、月経は長期にわたり止まってしまうことがあります。
生命を維持するため、余分な血液を使えなくなってしまうのです。
女子の格闘技選手などでも、減量やハードな練習により同様の現象が起きます。
また女性アスリート全般に言えることですが、試合などに合わせてお薬で月経の時期をコントロールしたりと、いろんな面で婦人科系の臓器に負担をかけることが多くなってきます。
婦人科系の臓器への負担は、なにもストリートダンスに限ったことではないのですが、そ
の中でも特に、
“骨盤周辺の筋肉(腰や腹、体幹部やコアと呼ばれる部分)を常に締め続けている”
と言う点が、他の運動と大きく違うところかなと私は感じています。
後で詳しくお話ししますが、骨盤周りの筋肉が硬く締め付けられていると、その中にある婦人科系の内臓への血液循環が悪くなる、と言うことに結びつきます。
さて、どの様なことが骨盤周辺の筋肉を締め付ける原因になっているかと申しますと、
体を大きく傾けたり、
左右非対称の形で不安定な姿勢で素早く動いたり、
つま先やかかとだけでバランスをキープしたまま動いたり、
また速い振りに対応するため、体中に一定の力を入れて締めた状態にしている、
などのことがストリートダンス全ジャンルにある要素かと思われます。
ストリートダンスの源流であるソウルダンスでは、現在のストリートダンスほどハードな使い方ではないようです。
(ソウルステップ以前のビバップなど、50~60年代の黒人のダンスでもアクロバティックでかなりハードなものもありましたが)
そのため、骨盤周りの筋肉もストリートダンスほど強く力を入れて締めている必要はなく、すり足の様に軽快にステップしたり、上半身をやわらかく使ったグルーヴ感が特徴のようです。
それに比べ現代のストリートダンスはかなり技術が進化したため、体にかかる負担も相当大きくなっています。
女性の場合、締め付ける状態が続いていると、本来の幅の広い骨盤が小さくなっておりますが、治療でそれらの筋肉がやわらかくほぐれていくと、本来の女性らしい曲線を描くウエストから骨盤のラインになっていくのが分かります。
おそらく、自然な形を保っていれば、周りの筋肉も余計な緊張がなく、月経周期なども安定しやすいのであろうと思います。
なぜなら多くの治療家は、それを目標としているからです。
整体師であれば、筋肉をリラックスさせて骨盤のゆがみを整えます。
鍼灸師であれば、骨盤周りのツボを使い、骨盤内の血行を改善させます。
漢方薬を処方するにも、お腹や腰周りの筋肉の硬さをチェックします。
少々説明が長くなりましたが、その様な理由で骨盤周辺の筋肉が固く、縮んだままであれば、骨盤の中にある内臓の血液循環にも影響します。
特に中学・高校の思春期にある女子は、発達すべき時期に血行が悪い状態が続くと、その後の婦人科の発育に影響します。
月経痛があまり自覚されていなくても、知らない間に起きている異変もあります。
婦人科の周期は独特なもので、一定の血液や組織が周期的に排泄され、また作られていきます。
それがうまく回ってこそ、女性の健康があると言えるでしょう。
かなり独特な運動形態であるストリートダンス。
技術が発達した分、体にかかる負荷。
それらに対応する具体的なケアの方法は、衣食住すべてにおいていろいろな手段が考えられますが、ここは筋肉や関節を整えると言う点にしぼってお話ししますと、
・骨盤周り(お尻、太もも、腰、下腹)の筋肉をほぐすこと
が、まずは大切かと思います。
過去の記事でも股関節の3方向からのストレッチを紹介していますが、他にもストレッチやセルフマッサージなどいろいろありますので、調べて応用してみてください。
また、もう一つ大事なことは、
・振り回すような開放的な運動
も行うことです。
腕も脚も、常に体の中心に向かって締めている状態がクセになっていますから、逆に体か
ら離れていく様にブラブラとゆらしたり、ゆっくりと振り回したりすることが効果的です。
たとえばカポエラみたいな動作を、動きにキレを求めずに大きく、ゆったりと脚を振り回してみるのもよいでしょう。
この際、運動による負荷が小さくなる様に、あまり高いキックをせず、連続動作もゆっくりと無理なく、気持ちよくできる範囲で行うことがポイントになります。
同じ要領で、パンキングなどをゆったりと大きく動かせば、上半身のリラックスになるかもしれませんね。
ピッチャーやバッターが、タオルを振ったりしてリラックスを図ったり、ゴルフの練習で長くて軽い棒(竹箒)などを振ったりするのも参考になります。
この機会にストリートダンスの動きに共通する体の負担、またそのケアの仕方について関心を持って頂ければ幸いです。
特にスタジオ経営者、指導者の方々にそうしたアイデアを現場レベルで活用していって頂ければと思います。
これからの世代のキッズの健康を守り、またご自身のダンスライフもいつまでも永く続けられることを願っております。