【女性ダンサーの骨盤と上半身の痛み】

 

今回は、前回に引き続き“女性ダンサー”にスポットを当てた第二弾です。

 

前回は女性ならではの特徴である


“骨盤が肩幅より広い”

“左右の股関節の位置が男性より離れている”


と言った身体的特徴から起こる、女性ダンサー独特の症状や、そのケアの仕方についてお話しました。

 

前回の記事を見直してみると、そのことに関連して女性ダンサーに多いと思われる症状をもう一つ思い出したのです。

 

それは、

“女性のストリートダンサーは上半身の故障が多い”

と言うことです。

 

・背中が痛い

・首が痛い

・肩の周りが痛い

 

また、腰や膝などが痛いと言っていたダンサーもよく話を聞くと、

 

・首のアイソレがいまいち

・背中や肩甲骨の周りが硬い、痛い

 

などの症状もあることが分かります。

 

つい先日来てくれたヒップホップの女性ダンサーは、背中と腰に痛みがあり、骨盤を診ると、やはりナチュラルな形ではなくなっているのです。

 

 

以前、救護サポートとして参加したダンスバトルのイベントに、ショーケースに出場するたくさんの高校生女子のダンサーの体を診た時のことです。

 

腰や股関節が痛いと言っていた彼女たちは、最近治療したベテラン女性ヒップホッパーと同じ様な骨盤になっていたのです。

 

どの様な骨盤の状態かと言うと、

“女性の本来の骨盤の形ではなく、男性の形に近くなっていた”

と言う事です。

 

本来女性の骨盤は、上が狭く、下が広い、女性特有のやわらかな曲線を描く形になっています。

 

女性らしい腰まわりのボディラインです。

 

しかし、それは両脚の付け根である股関節が広く開いていることを意味します。

 

前回の記事にも書きましたが、脚の付け根が左右に離れていますので、ストリートダンスによくある足を開いた低い体勢の時に、重心が下に落ちやすく、そこからアップの動作をするのがやりにくい構造となっています。

 

反対に、男性の骨盤は股関節の間がせまいので、左右の脚の付け根が中心、つまりセンターライン、中心軸に近いので女性より動きやすいのです。

 

治療に来てくれた女性ヒップホッパーが、話してくれました。

 

「力が下に逃げて、抜けてしまうので、その分、上半身で引き上げる様に力が入っているかもしれない。」

 

と。

 

このことからも医学的に見た女性の身体の特徴が、そのまま動き方に影響していると感じます。

 

上半身に疲労が蓄積し、背骨がねじれのゆがみ癖がついてしまうのもその為であると考えられます。

 

上半身の治療と共に、男性の形に近くなってしまった骨盤も当然調整していくのですが、“上半身で無理に引っ張り上げる”

と言う動作を改善させることもしないと、根本的な解決はできないかもしれません。

 

そこで、実際に低い態勢から上に上がる動作を、もっと楽にできる工夫をする、突き詰めると、

“股関節の動きをよくする”

と言う作業が有効と考えられます。

 

低い態勢から、上半身の力で引っ張り上げるのではなく、股関節の重心移動、たとえば左から右にゆっくり、正確に行うことや、骨盤をしっかり立てて行うことなどを体感すると良いでしょう。

そうすると上半身の力もさらに抜けてくると思います。

 

実際に足を大きく開いて立って膝は伸ばした状態で、股関節の左右の重心移動だけをやってもらうと、内股の筋が引き伸ばされて痛いと言うことでした。

 

これは過去にこの動きの確認をした、ほとんどの女性ダンサーたちが言っていたことを思い出しました。

 

開脚などはできるけど、何気ない動作で内股がつっぱって痛いのは、

“インナーマッスルにダイレクトに効かせるストレッチにはなっていなかった”

と言う事を意味します。

 

脱力して、骨だけで動くイメージでやってもらうと、必ずインナーマッスル主動の動きになります。

 

するとインナーは的確にストレッチされ、骨だけで動く、楽な重心移動(左右、上下)を覚えられるはずです。

 

独特の動きのあるストリートダンスでは、特に女性の場合この様な調整が必要になってくると思われます。

 

また、骨盤と言えば婦人科にもっとも関連あるパーツでもあります。

その周辺の骨のゆがみや筋肉の硬さがあると、その内部にある内臓の血行も悪くなり、様々な不調のもとにもなります。

 

現在も高校などにストリートダンスの部活が多く見られますが、義務教育にストリートダンスが取り入れられていく様になると、さらにダンス人口が増えるかもしれません。

 

テクニックもより複雑にハードになってきていますし、ダンスの動きによって独特の体の故障が出ますが、それが成長期にあっては特に注意が必要かと感じます。

 

成長期の子供でも、腰部のヘルニアや腰椎のすべり症などもよくある事です。

 

この女性のストリートダンサーに共通すると思われる症状を、そうなってから治療するだけではなく、いかに予防するか、その為のエクササイズや体の操作、姿勢のコツなどをさらに詳しく調べていきたいと思います。